たまこラブストーリー/ 山田尚子

もう来週までということで仕事帰りに見に行って来た。なかなか評判がよくYahoo映画でも96点とかとっててそんなにすごいのか、と気になる。たまこラブストーリー|映画情報のぴあ映画生活

でもまあ深夜アニメの映画化、見るからに可愛い絵、ラブストーリー、と言われるとその辺のハードルを乗り越えて観にいく人しかいない(基本的に好意的な人しかいない)ので平均点も高くなるのはわかる。

以下、ネタバレ含む


とある町の商店街の餅屋の娘たまこ。向かいに住んでる同じく餅屋の息子もち蔵との高3の夏の淡い恋の話。ああ、青春だ。とあるとかいいつつガンガンに鴨川デルタで最後は京都駅で出町柳商店街だったりするからその辺ニヤニヤしながら見てる。デルタの飛び石とか青春の記号過ぎてむしろ笑えない、いや、なんかいろんなことをツンツンついてくるような気がして恥ずかしい。関係ないけどデルタは30越えたら行ったらあかんのちゃうかと思うわ。子連れでもないと。さっさと次の世代に渡さなきゃいかんのちゃうか。未婚でまだまだ恋してるとか知らん、青春は青春の世代に渡しとかなきゃいかんのじゃないかなと、そういう映画。


計算し尽くした映画と監督がいってるように、アニメ映画の背景や表情も全部作り込めるが故の実写との違いとよく言うけれど、視線や、表情や、声、音、そういうのが機微に富んでて面白い。キャラの可愛さとか、テレビシリーズの本編でこんなのあったなとかあるんだけど、いやいや、2時間しっかり楽しめるエンタメ。

もち蔵に告白された帰り道のホワホワモワモワしてる中を走っていくのとか、会話の中に出てくる「もち」の言葉がもち蔵になってるのとか、走っちゃうのとか叫んじゃうのとか、対象だけを見てるから視写界深度が浅いのとか、いろんなリアルな感じがあるんだけど、ドラマ仕立てになりすぎずに随所にたまこらしい、たまこマーケットらしい世界観があったりして、とにかくなんと言うかふわふわしてキラキラして、36のおっさんには青春はまぶし過ぎてかなわない。

幼馴染みで近くにいすぎて好きとか考えたこともないという男の子から告白され(何書いてんだおっさん、と自分で思うわ)、今までと世界が違って見えるとかは槇原敬之っぽいなーと思う。でもそれも20年前とは自分にとっての響き方も違うよなーと思うし、例えば今でも槇原敬之とか谷村有美とかリンドバーグとか流れるとなんかすごく遠くのキラキラしたもの思い出すなーと思うのと近いというかそういう映画でした。

なんかよくわからんな。

たまこは安定して可愛いし、妹のあんこちゃんの制服姿がもうたまらん萌えるのだが、それもあくまでちょいちょい挟んでくる小ネタみたいなもので高3の夏とかみんないろんなこと考えて周りがすごく大人に見えたりしたもんだなと今でもぼんやり思い出す。

映画の話より自分の話になってしまうのは、きっと細部がきっちり描かれていて「ドヤッ」と見せられてるからで、だから余計に切ない気持ちになるんだろうなーと。いやー、本当にキモいな。2chに書いてるの見て思い出したけど、もち蔵が鴨川で「わー!!!」って叫ぶシーンがあって、それが通学で家を出てからあんこと鉢合わせてしばらく一緒に歩いてたかと思うと突然駆け出して叫び出すんだけど、このシーン、アニメシリーズでは逆だったなと思い出す。好きだった男の子が転校して、叫んでしまってたあんこを見守ってたのはもち蔵だったな。なんだかよくわからない衝動で叫んでしまうんだよな、青春は



てことで楽しかった。たまこのお母さんも魅力的だったし、たまこの父さんも素敵だ。恋と縁がなかったたまこが、急に父親が昔母親に贈った曲の入ったカセットを繰り返し聴いちゃうとか、実はそれが映画のOPにもEDにもなってるとか、もうただただ青春過ぎて辛い。青春時代もなんにしても、渦中にいる時はわからなくて、後からあれがそうだったんだとか気がつくもんなんだよな。

次は子供らの番なんだなー。どんな言い訳とか嘘ついたりとか恥ずかしことしたりとかするんだろうか。それもまた恥ずかしいけど面白いんだろうな。青春から遠く離れたおっさんむけアニメでした。