陽気なギャングが地球を回す/ 伊坂幸太郎

最近意識的に伊坂幸太郎ばかり読んでいる。前にも書いたけど、いろいろ読んでみて「他のも読んでみたいなー」と思ったのは伊坂幸太郎が一番だったし、重力ピエロは時間がかかったけどこれは結構すぐに勢いで読んだ。いや、おもろかった。Amazonのレビューにもあったけど、確かにルパンっぽい雰囲気もあって、それよりあれだ、イタリア映画の「黄金の七人」を思い出したりしましたよ、なんとなく。

砂漠、オーファーザー、重力ピエロ、そしてこれ。読み返し進める順番として適切なのかわからないけれどとりあえず順調に読んでいる。面白いし、伏線もきちんと戻ってくるし、読みやすいし、ああ好きだなあと思うけれど、伏線がキレイすぎてそんなにドキドキしないのは困ったなあ。好きなのか嫌いなのか、よくわからない。嫌いじゃないよ。フランス語の「Pas mal. 」みたいな感じだなあ。「悪くないね」て、いいとか好きとかいえばいいのにそうじゃない。うん、悪くない。


あるいは根本的にミステリが苦手なのかもしれない。僕の父はミステリーマニアで、数千冊の蔵書があってそれはほぼミステリーなんだけど、本棚から抜き取って読んだのは伊丹一三だけだったなあw でも、嫌いじゃないんですよ。続編も気になるし、なんなら映画だってみてみたい。佐藤浩市鈴木京香、はまり役だ。重力ピエロの「映像化は不可能と言われた」ってコピーの陳腐さはどうかと思うけどね。いやはや。

なんかね、伊坂幸太郎を読んでるとすごくモヤモヤするのです。そんな人いるのかな。例えばモヤモヤだけでいくと村上春樹吉田修一堀江敏幸なんてモヤモヤしまくりなんだけど、文章自体がモヤモヤするのではなくて、さっと読んで面白くて、エンターテイメントな小説で愉快な気持ちになって伏線の収まりにホッとするんだけど、読んでる時の爽快感が読後にない。なんだろうか、これは。んー。

あれかなあ、「うまいなあ」とか感じちゃうからだろうか。誰かがレビューで酷評してて、全体的に薄っぺらいと書いてたけど、じゃあ薄っぺらいかというとそうは思わないんだよなあ。そのへんがスッキリしないので余計にモヤモヤする。参ったな。


1番印象的だったのは後書きに載ってたインタビューからの引用。

真面目なことを真面目に伝えるのはフィクションの役割じゃないんで、荒唐無稽なもので覆って伝えたい

こないだのソングライターズでKREVAが言ってた「怒りを伝えるのは怒りによってではなく笑いで伝えるのがいい」というような内容の事とかぶって余計にインパクトがあったな。あとになってどれくらい覚えているだろうか。内容はさておき、読んでる時の爽快感と読後のモヤモヤはずっと残りそうな気がする。これが宗田理なら読後も爽やかだったりするんだろうか。もう20年くらい読んでないけど。うわ、年取ったなあw


とりあえず、重力ピエロにも出てきたカマラーゾフの兄弟を読む事にする。外国文学が読みたくなってきた。パルムの僧院とか、ナナとか椿姫とか。フランス文学ゼミ出てるくせに読んでなかった古典の名作ね。ま、おいおい。