ノルウェイの森/ トラン アン ユン (ネタバレ含む)

仕事帰りにレイトショー見てきた。週末だとなんだかんだと奥様に迷惑かけるし、今週末はトロンが気になって仕方ないので。奥様はただいま初めての村上春樹で下巻に手を伸ばしたところ。年末休みになったら、半日子供の面倒見て映画でも行ってもらいたいなと思ってるのでそんな感じで。2人で一緒に映画行けるのはまだしばらく先になるだろうからなあ。

もとい、映画の話。個人的な感想の記録なので以下はネタバレとか含みます。

でもまあ、あれ、ネタバレとか言ってもかなり原作に忠実なので本を読んでる人にして見たら、あのストーリーで公表されてるキャストで話が進んでいくというだけなので、「うわ!それ言うなよ!」とか多分あんまりないと思うけどね。いきなり結末の事書いちゃうけど、レイコさんと別れた後の見てる方の緊張感のハンパない感じと言うか、物語がそこで終わる事を知ってるがゆえに気になる事とか、なんかそんな感じ。

冒頭の展開の早さに少し驚き、小説を何回も読んで自分の中で出来上がっているイメージをなぞる感じがあって、小説抜きの単体の映画としてどこまで楽しめるんだろうと途中で余計なことをいろいろ考えたりもしたけれど、いやはや、なによりトラン アン ユンで良かったと思うし、キャストについてもみんな好き過ぎて一言ある感じなんだけど、全体の作品としてはすごく良かったなあと思ったりしてね。いやね、1つだけいうならレイコさんはもう少し太ってる感じなんですよ。渡辺えり子くらいの感じで思ってたし、いや、そんなに若くて綺麗じゃないだろ、と。でも実はレイコさんって38歳なんだよなあ。もっとおばさんのイメージだったんだけどな。やれやれ、年取ったなあなんて改めて考えたりなんかしてさ。38なんて今思うとぜんぜん普通の事だな。はは。


松山ケンイチはすごく良かったし、根岸くんがかぶって見えるのは美化された70年代を崇拝してるキャラと、リアルな70年代の設定とが変に重なったりしてるのもあるし、70年といえばはっぴいえんどが出てくるそのタイミングのレコード屋細野晴臣が働いてるというそのなんとも言いようのない感じもすごいな、と。キャストでいうと玉山鉄二の永沢さんも良かったなあ。ただのイケメンやと思ってたけど、GOEMONに出てたのも好きやったし、ラリーパパのチョウさんばりの横わけも良かった。いやー、好きだなぁ。


表現されてる色が綺麗だったこととか、実際の撮影が早稲田でやってるとか、羊男的世界ではない村上春樹的世界がきちんと再現されてることも嬉しかったなあ。エンドロールに六甲高校とでてきてにわかに興奮したけど、村上春樹がでてるのは六甲じゃなくて神戸高校だったね。はは。

いや、なんか映画の話じゃないなこれは。記憶とか思い出とか学生時代のこととかそういうのがなんかいろいろ蘇ります。20歳のころの女の子との会話とか、そういうのね。なんだろうか、昼間に東京の漫画規制の話をいろいろ見た後に40年前の時代の昔話みたいな光景や会話や、そういうのを見たから余計だろうな。


繰り広げられる会話はほとんど頭に入ってて、そういう風になるのかあ、なんてよくわからない見方をしたり、そこをそうやってまとめるのかあ、なんて思ったりするのは、あれだ、ピンポンとか鉄コン見てた時の感じに近いな。まあ、原作があってそれを映画化するとそういう風になるよね。見てないけどドラゴンボールみたいに全く別の解釈だとまた違うだろうけれど。


なんだかいろんな事を考えながら見てて、いろんな事を感じたのだけれど、全体通して思ってたのは「完全という不完全さと、不完全という完全さ」とでもいえば良いのかな。それは直子の事であり、緑の事であり、いや、もう端的に緑かわいいなあとかそういう事なんだけれど。なんだろう、あの「そんなに可愛くないじゃないの」と思いつつ引き込まれてしまう感じ。ワタナベくんは男前の役ではないので、松山ケンイチでもやり過ぎ感があると思うけど、なんだろうね、緑のあのかんじ。参ったな。

70年的なセリフ回しの胡散臭さとか、ミニスカートにサングラス。んー。いや、結局全面的にかわいいと認めようみたいのじゃないから余計に見入っちゃうんだなあ。いや、他のとこで見てもそこまで反応しないかもしれないけれど。ギャップというのかフェロモンというのか。やれやれ、20歳なんて設定があるから余計にややこしい。

いや、でもね、中学生の時にはよくわからなかった事が、何度も読んでいま改めてわかる事ももちろんあって、愛する事とか恋愛のややこしい感じとか、なんていうのかな、うまくいえないけどすごくしんみりとしみてきてるのです。ただし映画をこれからも何回か見るかと言われるとそうでもないだろうなと思います。もう一度小説を読むだろうな。

「100パーセントの恋愛小説」

改めて見てみてもすごいコピーだけれど、それが何かを表してるようでいて全然そうでもないし、でもまあ、不完全である事とか完全である事とか、人間の関係とかコミュニケーションとか若さとか、なんだかそんな事を漠然と考えながらみてたわけです。全然まとまらなくて不完全な日記なんだけれど、いや、でもまあなんというかそんな事です。

村上春樹好きな人は見に行くべきです。いやはや、楽しかったです。