盛永省治さんのウッドボウルを購入

少し落ち着いたので思った事を書き留めておこうと思う。週末の灯しびとで盛永省治さんのウッドボウルを購入しました。まあ、なかなか思い切りましたが、後悔はないです。それどころかなんというか清々しいのとウキウキするのと、どうやってこいつと過ごして行こうかと楽しい悩みを抱えて過ごしている感じです。こんな面白い買い物は初めて。

招待作家として盛永さんの名前を拝見したのが初めてで、どんな人だろうと調べているとvivo.vaなんかでも取り扱いがあったりして、よくよく見返してみると2年前に買ったBRUTUS Casaにも載ってて、あ、この人!と。ミーハーですよ、どうせ。載ってた写真はよく覚えてて、やっぱりパッとみてフィン・ユールのウッドボウルによく似てるなと思ったし、昔海外のサイトでフィン・ユールのアンティークボウルの値段を問い合わせてみたら数十万して、いつかは欲しいなと思ってもやっぱり手に入れるのは無理だなあと思ってたのが、「似たような雰囲気のウッドボウルが10分の1の値段」ってそれだけでちょっとときめいていたのは事実。似てるとかインスパイアとか、まあいろいろ言い方はあるんだろうけど。盛永さん自身もこんな風に答えている。

私の製作は、こんなのが欲しいなぁという憧れからスタートしています。 なので見ればお分かりのように。欧米の古いものを参考にしていることが多いです。 ですが、多く使うのは地元の桜やホオ、ケヤキなどの木材です。 そうやって、身近な素材に触れているうちに自然を少しでも理解することができれば いつか自分なりの形を生み出せると信じて毎日製作しています。


ご本人とも少し話しをしたけれど、いやあ、正直その辺はどうでもいいなあと思いました。制作の姿勢に対して「どうでもいい」というのではなくて、些細な会話の中で自分にすごく共感できるポイントがいくつかあって、結局そういうわずかなディテールの差異みたいなものが好きとか嫌いとかそういうところに影響するんだろうな、と思ったりして。


一つは、日本の木を使った日本の器であると言う事。
チークは、確かにきれいな素材で味もあるしきれいだなと思うんだけどどうも自分の中では洋物のポルノのような、「いいんだけどどうもしっくりこない」みたいな雰囲気がある。ゲスいなあ。つまりなんというか、「そういうきれいなもの」なんだな。気がついたら、特に意識した訳ではないけれど家の家具はほぼ楢材で、もちろん同素材で揃えてはいるんだけど、なぜ楢かというとやっぱり自分の自宅のダイニングや食器棚が子供の頃からずっと楢だったし、木そのものが日本のものではなかったとしてもやっぱり自分にとって身近な素材だから、というのは大きいなと思う。購入したボウルは山桜で、じゃあ山桜が自分にとって身近な素材かというと材木としてはそうでもないかもしれないけれど、少なくともチークやマホガニーなんかよりは身近に感じるものだなあ、と。

そしてもう一つは自分と同世代の人が、同時代にそれを作っている、と言う事自体が自分にとって意義のある事だなあと思う事。
灯しびとの集いは、けっこう出展作家が若くて、もちろんいろんな人がいるので一概には言えないけれど、30代くらいの、服装の感じや展示スペースの什器の感じとかそういうのをみてると、「この人好きだなあ」くらいの感じはなんとなく伝わる。もちろんアウトプットの作品の好みもあるんだけど、結局、同じ位の年で、服装の好みが近かったら、後はなんと言うかもうだいたい世代的なもので、判断とか考え方とかの基準が近いので、なんとかなるんじゃないかなーと思ったりするのです。

そういうのを面と向かって話したり感じたり、直接やり取りしたりできるクラフトフェアってのは楽しいな、と思います。もちろん、年は関係なくいいものはいいし、素直にかっこいいなと思うものもあるけれど(考えようによっちゃ「年が近い」というバイアスや色眼鏡ってのもあるわけで)、でもなんていうか、同世代の人が手を動かして作っているものというのは、自分自身に近いものがあるとは思うので、それが別に高名な作家のものではなくても自分にとっては納得できる要素だなあと思います。


盛永さんは一つ僕より年上で、坊主頭で白いシャツを着ていて、たったそれだけの親近感みたいなものとか、去年灯しびとで購入した二川さんの器もけっこう好きな感じだったんだけど、メールアドレスがFISHMANSの某アルバムのタイトルをもじってたりして、そういうのがなんというか、同時代的にぐっとくる瞬間だったりするんです。たったそれだけといえばそうなんだけど。会場で流してた音楽の選曲を頼まれたのだけど、「日本のモノ作りをする若手が活躍するフェア」で流れる音楽をと選曲してみたら、作家さんに「好きな曲ばかりで気持ちよく過ごせました」なんて言われたりして、なんというかそういう感じがすごく楽しかったなあなんて思い返したりして。

奥さんのダイニングチェアのデザイナーである小泉誠さんも灯しびとの選考委員だったりして、会場にお見えになった時に始めて少し話しが出来てミーハーだけどうれしかったりとか、そういうのが楽しかったなー。うむ。他にも散財したのでしばらくはおとなしく暮らしましょう、そうしましょう。